eSutute project

Initial aim
Readyfor クラウドファンディング取得時 2022年8月26日
ご支援いただいた初心を忘れないために継続公開します。(説明用に一部修正しております。)
外科医の現状
手術の難易度は高くなりました。
・小さな創(きず)での手術
・心臓を止めない手術
・カテーテル手術
これらによって、患者さんにとって治療の選択肢が広がり、手術の身体的な負担も軽減されつつあります。しかし、若手外科医にとって技術習得はより大変になりました。
日本における外科医不足はかなり深刻です。
その大きな原因として「外科医の手術トレーニング」が挙げられます。
10年後、現在の外科医の数と手術技術を維持することができるのか?、我々は警鐘を鳴らしています。
この「外科医の手術トレーニング環境」を改善するために、
✔️外科トレーニング専用の金魚すくいのポイ
✔️金魚すくいの専用ポイによるトレーニングの自動評価アプリ
を開発しました。
※外科トレーニング専用の金魚すくいのポイは、日本心臓血管外科学会のU-40(40歳以下の若手心臓血管外科医の会)にて提案されました。
従来の手術の練習器具と比較して、安くて利用しやすく、高品質な、外科手術トレーニングキットです。
このトレーニングキットが外科医にとって一般的になり、外科医の教育が効率化されれば、外科を目指す若者が今後増えることも期待できます。
また、外科医の手術トレーニング環境の問題は日本だけの問題ではありません。日本発のサービスとして世界中に展開可能であると考えております。



プロジェクトリーダーの紹介
一般社団法人メディカルキャリアラボ副理事長の山田敏之です
普段は名古屋市立大学に所属(助教・医局長)し、大学病院で心臓血管外科医として手術を行ったり、大学教員として学生を指導したりしています。
心臓血管外科医とは心臓や大動脈疾患に関して外科手術を行う医師のこと。
治療にあたる代表的な疾患は、
・弁膜症
・大動脈弁狭窄症・僧帽弁閉鎖不全症など
・冠動脈疾患
・狭心症・心筋梗塞など
・大動脈疾患
・胸部大動脈瘤・急性大動脈解離など
人間の体の一番重要な臓器であると言っても過言ではない心臓・大動脈を、人工弁や人工血管を用いて修理するのが仕事です。
研究面では名古屋市立大学に加えて慶應義塾大学にも所属(共同研究員)して、「医学研究の社会実装とエコシステムの確立」を目指した研究に取り組んでいます。
また、若手外科医の支援を目的として、自治医科大学心臓血管外科の荒川衛先生と「一般社団法人メディカルキャリアラボ」を立ち上げました。一人前の心臓血管外科外科医を目指しつつ、でも本業と並行して何かやりたくて、特にお互い医療機器開発にあこがれて「まず目に見えるカタチを」とのことでスタートしました。


深刻な外科医不足・外科医のトレーニングの課題
日本において外科医が不足しているということをご存知でしょうか?
外科医は自らの手で患者の疾患を直接治す、いわば”花形”の診療科です。しかし、その責任の重さ・働き方、また独り立ちするまでに時間がかかるということにより、外科医を目指す若者が減っているのが現状です。
(出典:厚生労働省 令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/index.html)
私は心臓血管外科医として、外科医を取り巻く手術トレーニング環境を改善すべきと考えています。
外科医を取り巻くトレーニング環境には、大きく分けて2つの課題があります。
・トレーニングをする側の課題
・トレーニングを教える側の課題
この2つの課題を解決することができれば、
外科医の教育は効率化され、外科医を目指す若者が増えることが期待できると考えています。
①トレーニングをする側の課題
トレーニングをする側の課題は、手術の練習器具は各自/各施設で準備する必要があることです。
たとえば心臓血管外科手術では、持針器(糸のついた針を持つ器具)と鑷子(せっし/ピンセット)を用いて心臓・血管を縫うという手技が重要となります。この手技は、すぐに習得できるものではなく、習得には相当の量のトレーニングが必要です。
(出典:末次 文祥(2014)心臓外科医が描いた正しい心臓解剖図 - 透視図 メディカ出版 掲載許可を得て使用)
1回1回のトレーニングの準備には多大な時間がかかるため、トレーニングの回数を確保することが難しいのです。
トレーニングの回数が確保できなければ、レベルアップにも時間を要することになります。


②トレーニングを教える側の課題
トレーニングを教える側の課題は、技量評価の定量的・客観的な指標が存在しないことです。
トレーニングは、トレーニングをする人とトレーニングを教える人が2人1組となって実施します。トレーニングをする人の「技量の評価」は、教える人の判断に委ねら、定量的・客観的な技量評価の指標が存在しないため、いまだに「目視」といった、主観的な技量評価が行われているのです。
主観的な技量評価では、トレーニングをする人は、不足している技術など、自身の技量の状態を把握しにくく、トレーニングが非効率となっている可能性が高いと考えています。
かといって、飛行機のパイロットが使用するフライトシミュレーターのような、立派な評価機構を構築するには多額の予算とシステムが必要であり、現実的ではありません。
「外科トレーニング用金魚すくいのポイ」と「自動評価アプリ」の開発
この2つの課題の解決策として私たちが考案したのが
✔️外科トレーニング専用の金魚すくいのポイ
✔️金魚すくいトレーニングの自動評価アプリ(e-Suture)
です。
安くて利用しやすく、高品質な、手術トレーニングキットです。
「金魚すくいのポイをトレーニングキットとして利用する」というアイデアは、日本心臓血管外科学会のU-40(40歳以下の若手心臓血管外科医の会)にて提案されました。
脆弱で繊細な金魚すくいのポイにトレーニング用の模様をスタンプし、その模様に沿って丁寧にかつ早く縫っていくというものです。
さらに、考案したポイのトレーニングにおける技量評価を定量的・客観的に行うことを目指し、スマートフォンを利用した手術手技の自動評価アプリを開発開始。
そして、2年が経過してようやくプロトタイプが完成しました。
アプリでは、ポイに印字された黒いマークを正確に針で射抜いているか、紙がどれくらい破れてしまったか、縫った際に並んだ糸は綺麗に配置されているか、手技に要した時間、が自動的に採点されます。
また採点方法として、これまでは熟練者が目視で「だいたい上手だ」と判断していた感覚と同等の採点結果が出るようなアルゴリズムを開発し、この一連の研究結果を論文化しました。
(Toshiyuki Yamada, Hisao Suda, Akihiro Yoshitake, Hideyuki Shimizu. Development of an Automated Smartphone-Based Suture Evaluation System. Journal of Surgical Education. May-Jun 2022;79(3):802-808. doi: 10.1016/j.jsurg.2021.12.012. Epub 2022 Jan 19. )
トレーニングの結果がアーカイブされてグラフ化され、トレーニングを重ねるとその成果が確認できます。この成長過程はいわゆるラーニングカーブと同等です。つまり「手術トレーニングのラーニングカーブの見える化」が達成されたことになります。
このトレーニングキットを使うことより、上記の
・トレーニングをする側の課題
・トレーニングを教える側の課題
の双方を同時に解決することができると考えています。
このトレーニングキットは、外科医の手術トレーニング環境を変える第一歩となり得ると考えています。
金魚すくいのポイを縫う練習の定量的・客観的な自動評価が可能となれば、心臓血管外科領域だけでなく、手術を行うすべての領域への発展が可能です。(小さな傷でカメラを使用した手術やロボットを使用した手術も同様です。)
このトレーニングキットが外科医にとって一般的になれば、外科医の教育は効率化され、外科を目指す若者が増えることも期待できます。
また、外科医の手術トレーニング環境の問題は日本だけの問題ではありません。日本発のサービスとして世界中に展開可能であると考えております。

資金使途
具体的には、ポイとアプリでそれぞれの下記の通りに資金を使いたいと考えています。
✔️外科トレーニング専用の金魚すくいのポイ
ポイの市販化に向けて、ポイの量産を行う必要があります。具体的には下記を行います。
金型の製作:100万円
テストの実施:100万円
✔️アプリ(e-Suture)
現状では、アプリ(e-Suture)は最低限の採点機能しかなく、まだまだアップデートが必要な状況のため、みなさまからのご支援をもとに、システムのアップデートを実施したいと考えています。具体的には下記を行います。
他の印刷パターンでのトレーニング機能の追加:100万円
画像解析精度の向上:100万円
※その他の費用
クラウドファンディング手数料、リターン発送費用など:100万円
市販化に向けてのスケジュール
市販化が進めば、トレーニングポイはネットでの通信販売で購入可能となる予定です。(アプリはすでにAppStore(https://apps.apple.com/jp/app/e-suture/id1585351527)でダウンロード可能です)
アプリ(e-Suture)の改良:2022年10月~2023年03月
専用ポイの量産:2022年10月~
市販化の本格化:2023年4月~
※上記のスケジュールはあくまで目安で、前後する可能性があります。